第二章 騎士から死神へ

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 ソルトは洋服の裾をひっぱりながら、食卓のある広間へと姿を見せた。こじんまりとしたテーブルの上にはリアが朝食を並べている。 「今日もお手紙きてますよぉ」 リアが机の片隅にある紙の山を指差す。ざっと見たところは十通ほどだが、昨日の分もあわせて倍はあるだろう。昨日は手紙に目を通す時間がなく、今日に後回ししていた。 「後で読む。部屋に持っていってくれ」 「はぁい!」 用意された椅子に座りながら言えば、彼女は手紙をゴムでひとまとめにし、広間から出ていった。それを見ながら、ソルトは右手でフォークを持ち上げ、目玉焼きに突き刺した。 黄身が白身の上にゆっくり、とろとろと流れ出る。フォークで小さめに黄身を纏った白身を切り、口に運んだ。味のしない目玉焼きに、一瞬眉間にしわを寄せるとつけあわせのパンに手を伸ばす。  塩コショウはしろ、と前に言ったのだがリアは忘れたのかわざとなのか、いうことを守っていないようだった。パンと一緒なら食べられないことはない、と思いながら小さくちぎり口に放り込む。ちょうどそのタイミングでリアが広間に戻ってきた。 「リア。この目玉焼き、味がないぞ」 「ぅえっ? あ、ああー、忘れてました」 「次は塩コショウ忘れるなよ」 「はぁい、すみませぇん」 わざとではなかったようだ。また白身をフォークで切り、口へと運ぶ。そしてパンをちぎる。 静かに流れる朝食の時間のあとは、先ほどの山のような手紙に目を通し“彼ら”の希望を叶え、迎え入れる用意をしなくてはならない。 ソルトはこの後にある仕事のことを考え、憂鬱な気分になるのだった。
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