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城の地下にあるラボこと研究室は、セキュリティレベルが高くソルトの虹彩もしくはリアの虹彩がなければ入れない。もしソルトが目を開けない状態でもリアがいれば入れる、といった具合だ。もっとも、二人共が目を開けないとなった場合は誰も入れない。
そんな状態になるのは、―大怪我をする可能性もあるが―だいたいは死を意味するからだ。ラボはソルトあってこそ機能を果たすものであり、その主がいないのであれば使われなくて当然だ、という考えのもとでこのような仕組みになっている。
「……気泡が出てるな」
置かれている試験管のひとつを覗き込んだソルトがつぶやく。透明で薄く青みがかった液体の中には気泡がふたつほど浮かんでいた。
「これは没だな。……この薬欲しさに死神の城に来るってことは、もう感染してるのか。とすれば、発症するのも時間の問題」
気泡が出ていない試験管を手に取ると、プラスチック製の四面体に流し込む。黒い蓋をはめ、こぼれないのを確認してから棚へとしまった。
そこには同じものがきれいに整列され、並べられていた。数は二十ほど。
「怪物を操れるってのは、一種の快感だ」
彼は、そう皮肉混じりに、だが面白そうに言葉を漏らすと静かに棚の扉を閉めた。
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