13)逃亡者

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 外壁のつくりがはっきりとわかるほど街に近づいた頃、前方から駆けてくる馬が目に入った。 「憲兵隊だ……」  馬を駆る小豆色の髪の男がきっちりと着込んだ制服を見て、ヤンが唖然として呟きを漏らした。  ラウルとヤンの前で馬を止めると、男は敬礼し、その名を名乗った。 「レジオルド憲兵隊第十七隊隊長オルランド=ベルニだ。察するに、貴公等は東のエストフィーネ村の者ではないだろうか」  エストフィーネ村。  二度と戻らない故郷の名前。  オルランドに言われるまで、ヤンもレナも自分達が暮らしていた村がそう呼ばれていることすら知らなかった。父親に連れられて様々な街を訪れた経験のあるヤンでさえ、生まれ育ったあの村が世界の全てだったのだ。  村を守るためには、憲兵隊のちからが必要だった。だが、ゼノに可能性を否定され、助けは来ないものだと諦めていた。  その憲兵隊が今、目の前にいる。野盗の襲撃には間に合わずとも、憲兵隊は村の要請に応えてくれたのだ。  村は焼け討たれてしまったが、逃げ延びた人々がまだ残っているはずだ。憲兵隊は、きっと彼らの助けになってくれる。
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