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「…白井はさ、その……好きなやつとか…いる…?」
緊張した面持ちで問われたのは、全く持って俺の予想の範疇を超えていた。
好きな…人?
『今も…信一郎のこと、好きだよ』
『お、俺……新のこと……好きなんだ。友達としてじゃなくて』
俺が好きなのは、
「ぁ……。い、いないです」
誰なのか。昨日好きって言ってくれたのは嬉しかったしドキドキしたけど、今目の前にいる人物にもドキドキしてる。
「……そっ、か」
俺の歯切れのない返答に違和感を感じているのは明らかだった。でも、そのことで特に追及することもなくただ頷いて、一言そう言っただけだった。
そんな時、頭痛が俺を襲った。
「──っ!」
あまりの痛さに、俺は頭を押さえた。
「大丈夫か?!」
先輩は立ち上がってこちらへ来て、顔を近付けた。
「……だい、じょう…ぶ」
です、そう続けるはずだったのに、痛さがそれを邪魔した。
「…保健室、行ってきますね」
「無理すんな。俺が連れてく」
無理して笑って一人で行こうとしたところで、先輩に引き留められた。
意識が朦朧としていく中で、倒れるこむ形で、先輩の背中に身体を委ねた。柔らかな温かさ、逞しい背中、そして仄かに香る先輩の匂いが俺の感覚器官を刺激した。
「ちゃんと掴まってろ」
その言葉を最後に、俺は現実を手放した。
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