八鏡国

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火の国 赤茶色の大地が広がり緑色の山々が連なる。 白鳫石で出来た豪奢な宮殿がそびえ建つ。 宮殿の中は白石畳が敷き詰められひんやりとして気持ちよい。 大きな白い柱に金の花唐草模様が入っている。それが間隔を置いて幾つも並ぶ。 玉座の壁は金で模様が描かれている。玉座は赤に金である。 そこに座るのはまだ年若い女王だ。 艶やかな髪を頭の上で大きな輪にし金の鳳の髪飾りを刺してある。整った顔立ちに勝ち気な瞳である。 大きな赤い勾玉の首飾りが胸元を飾る。 「只今、帰還いたしました。」 玉座の前でアキツと従人のシギは頭を下げた。 「よう戻った。で、アキツ。他にも言うべきことがあるんじゃなくて?」 姉のヒミは軽やかな明るい声であるが、アキツは怖くて顔を上げられなかった。 「も、申し訳ありませんでした。ごめんなさい!」 沈黙の後、扇がアキツの足元に飛んできた。先程までヒミが優雅に扇いでいたものに違いない。 「ひっ!」 「アーキーツーゥゥゥ。妾はそんなことを聞きたいんじゃないのぉ。」 「ひぃぃぃ」 姉王に凄まれアキツはすでに涙目だ。 「火のコントロールはちゃあんと出来るようになったのかしらぁ!それにシギ!アキツから目を離してるんじゃないわよ!」 「申し訳ありません!。姫から逃げられるのも私が不甲斐ないせいです。罰は受けます。」 シギはアキツより六個上の20歳。髪をお団子にまとめてあり、化粧気がまったくない。 「ちょっと待って!悪いのは私で、シギは関係ない!」 「ほぅ。罰は全て自分一人で受けるとはいい度胸ねぇ」 「ひぇっ!」 ヒミがアキツの胸元に下がっている首飾りに目を止めた。 「それはなに?」 ヒミが指差したものにアキツは手で触れた。青い雫型の石だ。 「これは、ナミ女王が下さいました。私の火の力を抑えるそうです。夜の国と岩の国で力を合わせて作ったとか。」 ヒミは目を見開き唇を噛み締めた。拳をギリギリと握りこむ。 しかし、それは一瞬のことだった。 全てを呑み込んで笑みを作った。 「そなたの罰は後で考えるわ。今は休みなさい。」
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