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「私が来るとそなたは歌を止める。」
笑いを含んだようにツクヨミは言った。
「気のせいでございましょう。」
タバタはそっけなく答えた。
ツクヨミは機織りに織られている布を見た。白い地に金の粒子が煌めく。
「美しいな。流石は機織りの達人だな。これは姫の着物か?」
「はい。」
「肌触りも良い。きっと喜ぶな。」
「勿論ですとも。」
タバタの自信満々な声にツクヨミは小さく笑った。
「そういえば、水の国より水晶と花が届いておりましたよ。」
「そうか。では、うまくいったのだな。」
ツクヨミは一人頷いた。
カタン、コトン
タバタは機織りを再開した。
「では、褒美の品とやらを見て来よう。」
「ええ、そうしてくださいまし。」
つげなくあしらわれて、ツクヨミは小さく息を吐いて白壁の方へと足を進めた。
「タバタ、地上が恋しいか?」
ツクヨミの問いかけにタバタの手が止まった。
「……いえ。」
カタン、コトンカタン
ツクヨミの言葉を遮るように機織りの音が響いた。
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