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稲波の宮は、稲の青葉に囲まれていた。
風が吹くたびに稲の青い実が揺れる。
その向こうに粗粗とした檜の宮が立っていた。
その宮の前で、十人の兄弟は姫はまだかまだかと待っていた。
姫は恥ずかしがりやらしく、訪ねても顔を見れないことの方が多かったがヤソ達は、めげなかった。
そこにナムチが遅れてやってきた。
「遅かったではないか!」
「わざとゆっくり歩いてきたのではないか!?」
と兄達に責め立てられる。
宮の門が開き、美しい娘が姿を現した。
「おお、ヤガミ姫!」
「なんと美しい!」
「ぜひとも私の妻に!」
ヤソ達は、宝を出しヤガミ姫に差し出した。ヤガミは首を横に振った。
「私は、貴殿方のお申し込みはお受けできません。私は、ナムチ様と結婚するつもりです。」
ヤソ達はそれを聞いてどよめき怒った。
「ナムチ様。どうぞ中へ、シロを助けて頂いたお礼がしたいのです。」
ナムチは頷いて、宮の中へと入った。ヤソ達の目と鼻先で門は閉められた。
「あの野郎」
「よくも俺のヤガミ姫を!」
いつも見下していた弟によい所をもっていかれて、兄弟達は怒りに燃えていた。
「あの野郎!殺してやる!」
「ぶっ殺す!」
怨嗟の声が次から次へと上がった。
シロは、ナムチより先に裏口から帰り、自分に起こったことをヤガミ姫に報告したのだ。それを聞いたヤガミ姫は大層、ナムチが気になり戸の隙間から覗いたら大層な美丈夫に一目惚れをしてしまったのだ。
また、ナムチもヤガミ姫の美しさに心を奪われてしまったのだ。
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