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火の国
アキツは、一日ゆっくりと休み旅の疲れを癒した。
日が高くなった時に、玉座の間へと呼ばれた。
「よう休めたかしら?」
「はい。姉王様。」
アキツの応えを聞いてヒミはにっこりと微笑んだ。
「貴女の水の国への損害で我が国は財政難よ。」
ビクッッとアキツが青冷める。
ヒミはアキツに指差した。
「岩の国へ赴いて、鉄剣を大量に作りなさい。」
「鉄、剣ですか?」
「ええ、貴女の炎を存分に発揮できるわよ。」
アキツは唇を引き結んで頷いた。
「わかりました。」
「おやおや、我が妹をすぐに旅立たせるとは姉上もつれない。」
含み笑いと共に青年が玉座の間へと入ってきた。すらりとした長身に端正な顔立ち赤黒い髪はやや短く右目に長くかかる髪の下には黒い布で覆われている。
左目は獣のような瞳がぎらついており左耳に揺れるは真っ赤な勾玉の耳飾り。
「カグチ兄上様。」
「もう風の国から戻ったのかぇ?カグチ。」
カグチは玉座の前に跪いて頭を下げて臣下の礼を取った。
「アキツが火の国に戻った。と聞き及びまして、ただちに帰還しました。」
ヒミとカグチは同母姉弟でアキツとホヅミは異母兄妹にあたる。
「しかし、すぐさま岩の国に赴くと言う。」
カグチはヒミを見上げた。
「私も岩の国へアキツと共に参りましょう。」
「あ、兄上様?」
「…。風の国はいかがであった?」
「不審な点は見受けられませんでした。」
「そうか。」
ヒミはしばらく思案して
「カグチ、お主も岩の国へ赴け。」
「御意。」
カグチとアキツは一礼して玉座の間を後にした。
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