八鏡国

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岩の国 その名が示す通り、ゴツゴツとした岩山が並ぶ。全ての山は鉱山で各山からいろんな石が取れる。この国の財源と言ってよい。 現在、岩の国は二つの国に別れている。東に位置する岩王がおはす亀岩宮。西に位置する八門の一族。 アキツ達は、火の国と関わりのある八門を訪れた。 八門の一族の住む村は、あたりを山が囲っている。目につくのはタタラ場の数だろうか。煙が行く筋も立ち上っている。 「壮観ですねぇ」 アキツが感嘆の声をあげた。 「アキツが此処に来るのは久しぶりか。」 「確か10年前でしたね。アキツ姫様が来られたのは」 カグチの言葉にシギが答えた。 「すんません。私まだ四歳だったから覚えてないです。」 久しぶりだろうと言われても困る。 「カグチ皇子お久しぶりでございます。」 頭を下げたのはカグチより若冠歳上に見える柔和な青年だ。 「ツチイカヅチ殿、元気そうで何より。」 「こちらの姫君はもしやアキツ姫様でございますか?。」 「は、はい。」 ツチイカヅチはにこやかに笑って 「大きくなられまして。アキツ姫様の噂は聞いておりますよ。」 「はぁ。」 きっととんでもない噂だろう。 八門は岩の国にあって火の国の民である。そう言うと少し語弊はあるが。 他国同士の婚姻は認められている。そして力は母系を受け継ぐ。八門は岩の国に嫁した火の国の皇女を祖に持つ。火の力に目をつけたヒミはタタラ場を設け製鉄に力を注いだ。 鉱山ならば辺りに幾らでもある。 岩の国王は黙してはいるが、民達はあまりよい顔をしてはいない。 遠くからタタラ場を眺めると巨大な蛇に見えることから、八門のオロチと呼ばれている。 タタラ場を管理しているのは八人の長だ。ツチイカヅチはその長の一人である。
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