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「お帰り、姉ちゃん」
部屋に帰るなり、美里がそう言って声をかけてくる。
それに、今の自分は一人ではないんだ、と実感させられた。
「……ただいま」
一拍遅れて返事をした明里に、美里は怪訝そうな表情になった。
「どうしたの?」
「あ、久々だったから。このやり取り」
そんな美里に手を振りながら、明里は靴を脱いだ。
一人暮らしは、もう二十年近くもやっている。
途中実家に戻って暮らしたこともあったけれど、臨時の教員をしていた時も、完全に辞めて今の転職した時も、ずっと一人で暮らしてきた。
その間、「ただいま」という言葉に、「お帰り」と返す相手は、いなかった。恋人がいる時期もあったが、同棲したことはないので、本当に久々のやり取りだった。
「私も、久々だよ」
でも。思ってもいないことを美里は言った。
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