1 その戦いは、うどんから始まった。

3/28
154人が本棚に入れています
本棚に追加
/427ページ
「そうですか」  その返事に、明里は頷いた。 「真中さんは、讃岐うどんの方が好きなの?」  でも明里の表情を見て、安部さんがそんなことを尋ねて来る。 「讃岐うどん?」 「讃岐うどんはコシがあるからね。地方によっては、くたくたに似たうどんが好まれるけど、讃岐うどんは、弾力があって固めなのよ」 「うどんって、全国皆どこも同じだって、思っていました」 「それがそうでもないのよ。例えば名古屋のきしめんだって、うどんとお仲間なのよ」 「へええ」  意外なうどんの話に、明里は自分のうどんの不味さも忘れて聞き入った。  たかがうどんだが、色々な種類があるのだ。 「うどんの食べ方だって、色々でしょ。例えば私達が食べているのは、「素うどん」と言われているものだけど、茹でたものを冷水でしめてざるに盛ったものは、ざるうどんだし、つゆで煮たうどんは、煮込みうどんでしょ?うどんって、シンプルなだけに色々な食べ方ができるのよね」
/427ページ

最初のコメントを投稿しよう!