とある上司とその部下

2/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「これはこれは、森谷部長様。わざわざお越しいただき、ありがとうございます」  深々と頭を下げる、取引先の部長。その後ろには同じように頭を下げる多数の部下。彼が今までの人生で歩んできた道程の成果か、随分と慕われているようだ。  だが定年間近までお年を召されているためか、その手が僅かに震えていた。 「こちらこそ、わざわざお出迎えありがとうございます。渡辺部長」  こちらの部長、森谷が返すように頭を下げる。 「彼はうちの新人でして、今回は経験を積ませたく同行させました」  森谷部長はそういって僕に目配せをする。社会人ならその意図は汲める。 「初めまして。長瀬と申します。未熟な若輩者ですが、どうかよろしくお願いします」 「渡辺と申します。こちらこそ、どうかよろしく」  そう言ってお互いに頭を下げた。 「では、会議室へ案内します。社長も、後程参りますので」  挨拶もそこそこに、会議室へと案内される。  そこで、本日の議題を進めるのだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!