第一巻 卒業まであと半年

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【美咲と健太@放課後の音楽室】 「健太ぁ。ちょっと聞きたいことあるんだけど」 「なんだよ」 「あんたのブレザーのボタンって、すでに予約入ってんでしょ?」 「予約って」 「卒業式で、そのブレザーのボタン下さい、って言われたか?ってこと」 「そうだね。言われたような気がする」 「って何人に言われたのよ」 「10人くらいだったような気がするけど。覚えてねぇよ」 「あっそっ。じゃぁネクタイは?」 「ネクタイは入学式の日に、真菜に予約された」 「あっそっ。真菜らしいわ。じゃぁワイシャツのボタンは?」 「ブレザーのボタン欲しがってた女の子が、もし無理ならワイシャツのボタン下さい、って言ってたような気がすっけど」 「そっか。みんな考えること一緒ってことね」 「お前は俺のボタンなんか必要ねぇんだろ。大体俺のこと興味ねぇみたいだし」 「一応言っておきますけど、私はあなたに好意を寄せております。態度がそれっぽくないのは育ちのせい。好きな人は?と聞かれたら、あんた、って言います」 「怖えぇよ。そんなに怒った顔で好きって言われても、うれしくねぇじゃんか」 「あいむ総理・・・そーりー大臣」 「それって明治時代に流行ったギャグか?」 「昭和らしいけど。んなことより、あたしもあんたの何かを記念に欲しいのよ。あんたを好きだったという証に」 「俺を好きだった証?本気かお前」 「ホンキートンク」 「何だよそれ。ついてけねぇ」 「じゃぁ、率直に言わして『いただきまーす』」 「ごちそうさま」 「って逃げんの?」 「うそぴょーん。早く言ってみろよ」 「あんたのワイシャツ一枚まるごと、卒業式であたしに下さい」 「この学校で一番イケメンの俺様のワイシャツを、美咲にってか?だってワイシャツのボタン欲しいって子もいるんだぜ」 「そこを何とか。ワイシャツはまるごと一枚、美咲に渡すことにした、って、その子に断っていただいて」 「ダメよーダメダメ」 「おネェか、あんたは」 「話ってそれだけ?バイビー」
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