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【美咲と由梨@馬車道】
「由梨ぃ、聞いてよ。健太に卒業式でワイシャツくれませんか?ってコクったら、ワイシャツのボタンが欲しいって子がいるんだぞ、って言われちゃった」
「やっぱ校内一のイケメンだけあるわね。ワイシャツのボタンまで予約が入ってたかぁ」
「それよか、健太ったら、あたしが健太を好きだってこと、冗談だと思っているみたい」
「それはあんたのしゃべり方が悪いと思う。好きですって言葉を出す時は、乙女はオドオドしながら上目遣いでコクるものよ」
「そっか」
「そりゃそうでしょう。ガンとばしながら『あんたの事、好きじゃんか』って言われてもね。言われる健太君の身になって考えてみれば?」
「確かに。怖い、って言われた」
「怖い、かぁ。しゃーないね。健太のワイシャツは諦めようか」
「やだやだ。健太のワイシャツ、パジャマにして、ムラムラしながら寝たい」
「だから、横浜馬車道でそういう妄想は辞めてちょうだい」
「だって、健太君の爽やかな匂い付きワイシャツ欲しいんだもん」
「美咲ぃ。誠人(まさと)のワイシャツで我慢しなさいよ」
「酸っぱい匂いのする誠人のワイシャツなんか欲しくない」
「あんたねぇ。家の洗濯機で自分のお父さんのワイシャツ見たことある?」
「あるけど、お父さんのワイシャツがどうしたの?」
「男のワイシャツには汚れが付き物なの。汗臭い誠人のワイシャツも、爽やか臭の健太のワイシャツも、きっと襟と袖の裏には黒ずみがあるのよ。はいこれ、って脱いで渡された瞬間、そんな襟や袖の裏が汚いワイシャツを見て、わぁうれしぃ!ってなると思う?」
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