第一巻 卒業まであと半年

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【美咲と由梨@馬車道】 「由梨ぃ、聞いてよ。健太に卒業式でワイシャツくれませんか?ってコクったら、ワイシャツのボタンが欲しいって子がいるんだぞ、って言われちゃった」 「やっぱ校内一のイケメンだけあるわね。ワイシャツのボタンまで予約が入ってたかぁ」 「それよか、健太ったら、あたしが健太を好きだってこと、冗談だと思っているみたい」 「それはあんたのしゃべり方が悪いと思う。好きですって言葉を出す時は、乙女はオドオドしながら上目遣いでコクるものよ」 「そっか」 「そりゃそうでしょう。ガンとばしながら『あんたの事、好きじゃんか』って言われてもね。言われる健太君の身になって考えてみれば?」 「確かに。怖い、って言われた」 「怖い、かぁ。しゃーないね。健太のワイシャツは諦めようか」 「やだやだ。健太のワイシャツ、パジャマにして、ムラムラしながら寝たい」 「だから、横浜馬車道でそういう妄想は辞めてちょうだい」 「だって、健太君の爽やかな匂い付きワイシャツ欲しいんだもん」 「美咲ぃ。誠人(まさと)のワイシャツで我慢しなさいよ」 「酸っぱい匂いのする誠人のワイシャツなんか欲しくない」 「あんたねぇ。家の洗濯機で自分のお父さんのワイシャツ見たことある?」 「あるけど、お父さんのワイシャツがどうしたの?」 「男のワイシャツには汚れが付き物なの。汗臭い誠人のワイシャツも、爽やか臭の健太のワイシャツも、きっと襟と袖の裏には黒ずみがあるのよ。はいこれ、って脱いで渡された瞬間、そんな襟や袖の裏が汚いワイシャツを見て、わぁうれしぃ!ってなると思う?」
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