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図星だったのか、ソラが焦りを誤魔化すように首を振る。
「そう? さっきリットと後で遊ぼうって話してたのは、どこの誰かしら?」
言われて、ソラがなにかを話す前に他の男の子が「ソラです」と加え、ソラが「あっ、お前!」と混乱を露にした。
「ほう、そうか。じゃあ、早く終わるように、一番やる気のあるソラに当てまくってやるか」
「え、まじで!?」
「よかった。私、歴史とか苦手なのよね」と隣の女の子が笑い、ソラが「くそー」と漏らす。教室にカラカラとした笑い声が響いた。
―孤児だった俺は、夢を追って人生の賭けに出るよりも、無難に生きることにした。
数年前に学んだことを、俺と同じ孤児の子供たちに教えるだけの、無難な生き方。
不満がある訳じゃない。少し生意気だが、可愛いげのある子供たちを相手にするのも、それなりに楽しい。
あまり多くはないが、給料をもらい、家を借りて一人で暮らしていけるのは、孤児院にいたときと比べて「自由」だ。
では、なぜだろう?
なぜ、こんなことを考えるのだろう・・・?
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