1 ヒーローはじめました

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「うん、それじゃあね」 「ああ、またな」 (よし、今日は上手くやり過ごせたな) 手を振って歩き出すエトリを見送り、振り返って一歩を踏み出そうとした、その時だった。 「あ、忘れてた!」 孤児院向かっていたエトリが、ピタリと歩みを止め、振り返る。もう嫌な予感しかしない。 「・・・ん?」 一応、聞き返す。よし、今からジョギングだ! と無視しても良かったかもしれない。 「そういえば、さっきダレちゃんから、ユエル君の仕事が終わったら呼んでくれって・・・」 「・・・」 「・・・頼まれたん、だったよね?」 知るか、と突っ込みたくなるが、俺は素知らぬ顔で「気のせいだろ」言い放つ。 「あれ、そうかな?」 「ああ、きっと幻覚か何かだ」 「そうかなぁ」 首をかしげ、エトリはまた孤児院へ向かって歩き出した。 それを見るや否や、俺も踵を返し、早足に歩き出す。 (聞いてない。俺はなにも聞いてない) 「あ、いつものところで待ってるって!」 振り返ると、もう少しで姿が見えなくなる、というところでエトリ振り返り、笑顔手を振っていた。 (チクショウ・・・) 俺の平穏な一日が終わりを告げた。
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