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「帰っていいですか?」
一応、呼び出されたから来たものの、正直、関わりたくなかった。
ダレイドの依頼は、エトリのそれとは比にならないほど面倒なものが多いからだ。
「ユエルよ。お前、漫画を読んでないのか?」
急になんの話を、と思ったが、一応返事をすることにした。
「漫画って、あの、何年か前から、王都から発行されているっていう・・・」
正直、知らないことはない、というよりは好きな部類だった。想像の世界で活躍するヒーロー。恋愛の物語。空想の未来。多岐に渡る作品に中には自由が詰まっているようだった。
同時に、そんなものは子供の読み物。いい大人が目を輝かせて読むようなものではないと、批判的な意見もあった。
「・・・ま、まぁ、読んでなくはないですけど。あれは子供の読み物でしょう?」
「そんなことはない! 特にそのなかでも正義のヒーローを題材にした、あの作品は最高だぞ!」
一応、大人な対応を心掛けて返答したつもりだったが、ダレイドは憤慨するように返した。
「世界の平和の為、全力で悪に立ち向かうその姿は正に!男に中の男だろう!」
「ダレイドさん、そんなことより仕事探した方がいいんじゃないですか?」
熱く語るダレイドに、俺は冷静に突っ込む。そう、彼は現役のニートなのだ。
「そんなこと、ではない! 世界の平和はどんなことよりも優先してしかるべきだ! ・・・ユエルよ。お前はあの作品を素晴らしいとは思わないのか?」
「・・・いや、まぁ、面白いとは思いますよ」
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