1 ヒーローはじめました

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「帰っていいですか?」 一応、呼び出されたから来たものの、正直、関わりたくなかった。 ダレイドの依頼は、エトリのそれとは比にならないほど面倒なものが多いからだ。 「ユエルよ。お前、漫画を読んでないのか?」 急になんの話を、と思ったが、一応返事をすることにした。 「漫画って、あの、何年か前から、王都から発行されているっていう・・・」 正直、知らないことはない、というよりは好きな部類だった。想像の世界で活躍するヒーロー。恋愛の物語。空想の未来。多岐に渡る作品に中には自由が詰まっているようだった。 同時に、そんなものは子供の読み物。いい大人が目を輝かせて読むようなものではないと、批判的な意見もあった。 「・・・ま、まぁ、読んでなくはないですけど。あれは子供の読み物でしょう?」 「そんなことはない! 特にそのなかでも正義のヒーローを題材にした、あの作品は最高だぞ!」 一応、大人な対応を心掛けて返答したつもりだったが、ダレイドは憤慨するように返した。 「世界の平和の為、全力で悪に立ち向かうその姿は正に!男に中の男だろう!」 「ダレイドさん、そんなことより仕事探した方がいいんじゃないですか?」 熱く語るダレイドに、俺は冷静に突っ込む。そう、彼は現役のニートなのだ。 「そんなこと、ではない! 世界の平和はどんなことよりも優先してしかるべきだ! ・・・ユエルよ。お前はあの作品を素晴らしいとは思わないのか?」 「・・・いや、まぁ、面白いとは思いますよ」
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