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窓際のベッド
家具の配置の都合で、俺のベッドは窓際にある。でもそれで困ることは何もない。
部屋にはエアコンがあるから、掃除の時くらいしか窓のを開けることはないし、カーテンもだいたい閉めっぱなしだ。
窓があるからといって、日の光がガンガン差し込む訳でも、熱気や寒気が流れ込む訳でもない。眠っていて不快さを感じたことは一度もない。
今日もいつも通り、クーラーをタイマー設定にして眠りについた。昨今は、温度調節をして一晩中エアコンを効かせていた方がむしろ電気代がかからないらしいが、俺は寝入ると朝までまず起きないので、寝入り端さえ快適ならば充分なのだ。
なのに今夜はおかしな時間に目が覚めた。
枕元に放置したスマホで時間を確かめると、寝入りから三時間ばかりが経っていた。もちろんこんなに長くエアコンをタイマーにはしていない。
なのに、体の真横から定期的に風が吹きつけてくるのを感じるのだ。
寝惚けて窓を開けたのだろうか。
そう思い、起きて確認してみるが、窓はきっちり鍵まで締まっている。そもそもカーテンは揺れていなかった。
エフコンの誤作動だと思い、寝直したが、一時間ばかりでまた同じ状況に陥った。でもその時にはもう、寝惚けて窓を開けたとか、エアコンの誤作動を疑うとかはなかった。
薄ぼんやりとした視界の中、確認できるいくつかのこと。
エアコンの電源ランプは消えていて、動いていないのは一目瞭然。窓も、閉め切ったカーテンはそよとも動く気配はない。
なのに風が吹きつけてくる。窓側から、定期的にずっと、少し生暖かいふわっとした風が吹いてくる…。
眠ったのではなく、気を失う形で俺の意識は途切れた。
その翌日、慌ただしく模様替えをして、俺はベッドを窓際から移動させた。以降、この夜のような奇妙なことは起きていない。
いまだに、夢か気のせいと思う自分もいることはいるが、とりあえず、窓際にはもう二度とベッドを置かないと決めている。
窓際のベッド…完
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