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「待ってください!」
呼ばれてゆっくりと朽葉が振り向く。
「お釣りです」
差し出した夏目の手を見詰めて、
薄く笑った朽葉が首を振る。
「取っておいて下さい」
「いえ、
秋月さんに言われましたから」
「あなたが取っておいて下さっていいんです」
夏目の目が細まる。
「あなた方から貰う謂れがありません」
きっぱりと言った夏目が、
黒いレザーの胸に釣りを押し付けた。
「……飼い主が強情なら、
忠犬も強情というわけですか」
黒い丸サングラスの奥で、
何かがゆらりと立ち上って。
夏目がはっと身構えようとした時、
横から沼田がその手首を掴んだ。
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