第1章

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「待ってください!」 呼ばれてゆっくりと朽葉が振り向く。 「お釣りです」 差し出した夏目の手を見詰めて、 薄く笑った朽葉が首を振る。 「取っておいて下さい」 「いえ、 秋月さんに言われましたから」 「あなたが取っておいて下さっていいんです」 夏目の目が細まる。 「あなた方から貰う謂れがありません」 きっぱりと言った夏目が、 黒いレザーの胸に釣りを押し付けた。 「……飼い主が強情なら、 忠犬も強情というわけですか」 黒い丸サングラスの奥で、 何かがゆらりと立ち上って。 夏目がはっと身構えようとした時、 横から沼田がその手首を掴んだ。
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