第1章

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「―――三千万?」 金額を見た夏目の目が丸くなる。   「そんな……こんな話は聞いていません!」 「そんなもこんなも、 こっちにゃぁ証文があるんだよぉ!」 恫喝に慣れた声が上がり、 突然金髪の男が立ち上がった。 「下手に出てりゃァ―――」 不意にきらりと光を弾いて。 男の目の前のカウンターに飛んできた何かが転がった。 「……なっ」 思わず男が飛び退って、 座っていた椅子が派手な音を立てて倒れた。 カウンターにごろごろと転がったそれは、 血糊も生々しい魚の頭だ。 「あ、 すみません」 魚を捌いていたら手が滑って~と、 へらりと笑った夏目が腕を伸ばす。 「んだとぉ!」 「沼田」 カウンター越しに夏目の胸座を掴んだ男を、 朽葉がたしなめる。 剥き出しの上腕に爬虫類めいた刺青をした沼田が、 渋々といった様子で手を放した。 三白眼が夏目を睨みつける。
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