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すいと立ち上がった朽葉が、
秋月の手から証文を抜いた。
「……また来ますよ。
良く考えておいて下さい」
釣りは要りませんとカウンターに一万円札を置いて、
男が出て行った。
覚えてろよ!とお決まりのセリフを残して、
沼田がガシャンと音高く戸を閉めた。
「秋月さん……いったい?」
なにがどうなっているんです、
と夏目が秋月を振り向く。
「……つりを」
俯いて唇を噛んだ秋月の低い声。
「はい?」
「つりを渡して来い!」
「あっ―――はい!」
今までに聞いた事のない声で怒鳴りつけられて。
夏目が慌ててレジから釣り銭を出す。
引き戸を開けて路地に出れば、
雨の上がった曇り空の下に去っていく後姿が見えた。
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