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「―――っ!」
右腕を捻り上げられて夏目が目を細めた―――次の瞬間。
沼田の方が地面に叩きつけられていた。
濡れた歩道に水が撥ねる。
屈んだ夏目が沼田のズボンのポケットに釣銭を捻じ込んだ。
「失礼します」
朽葉を一瞥してひとつ頭を下げて。
夏目が走り去った。
「―――この……」
起き上がって後を追おうとした沼田の腕を朽葉が押さえた。
不満気に沼田が見上げるのに軽く肩を竦めてみせる。
夏目の後ろ姿を見送るその唇に薄く笑みが浮かんでいた。
「……秋月さん?」
夏目が戻ってくると、
秋月は背中を向けてカウンターに腰掛けていた。
隣に座って顔を覗き込むと、
うっすらと笑ってみせる。
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