第1章

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「―――っ!」 右腕を捻り上げられて夏目が目を細めた―――次の瞬間。 沼田の方が地面に叩きつけられていた。 濡れた歩道に水が撥ねる。 屈んだ夏目が沼田のズボンのポケットに釣銭を捻じ込んだ。 「失礼します」 朽葉を一瞥してひとつ頭を下げて。 夏目が走り去った。 「―――この……」 起き上がって後を追おうとした沼田の腕を朽葉が押さえた。 不満気に沼田が見上げるのに軽く肩を竦めてみせる。 夏目の後ろ姿を見送るその唇に薄く笑みが浮かんでいた。 「……秋月さん?」 夏目が戻ってくると、 秋月は背中を向けてカウンターに腰掛けていた。 隣に座って顔を覗き込むと、 うっすらと笑ってみせる。
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