第1章

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頃は梅雨。 毎日細い雨が降り続く季節。 六月も終りだというのに長袖でも肌寒い朝もあれば、 蒸し暑く肌がべたつく夜もあって。 天候の安定しない日が続いている夏の初め。 暖簾を出そうと店の引き戸を開けた夏目が、 相変わらずのどんよりとした空を見上げて軽く溜息をつく。 「毎日こう雨じゃ、 滅入っちゃいますよね」 「梅雨は雨が降るものと決まってるぞ」 カウンターの中で顔を上げた秋月が笑う。 手元には昼に出す定食用の鶏肉と冬瓜の煮物の鍋。 軽く冷やしたそれを小鉢に盛って冷たい葛餡をかけていく。
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