第1章

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「……種は出した方がいいぞ」 腹をこわす、 と真面目な顔で秋月が言った。 デザートに合うガラスの器があるからそれを出してくると、 母屋に戻っていく秋月を見送って。 はーと長い溜息をついた夏目が、 厨房にしゃがみこむ。 ……俺、 どうかしちゃったのかな。 俯いた額に落ちる黒髪をかきあげて、 夏目が吐息をもうひとつ落とした。 秋月さんは料理人としての腕も良くて、 尊敬できて、 真っ直ぐな人で。 でも意地っ張りで強情で、 なのにどこか危なっかしいところもあって、 目が離せなくて。 側にいて役に立てたら嬉しいと思う。
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