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「おやおや、我が妹ではないか」
なんでこんなところに。
そんな言葉が続きそうな、チープな台詞が耳にはいる。
これで視界にさえ入らなければ、聞こえなかったで済む。が、うっかり主は目があってしまったらしい。
これで返事をしなければ、どうなるかわからない。
相手はこれでも、次期国王候補なのだ。
あくまで候補、だが。
「お久しぶりです、兄様」
主は口上をすらすら述べながら、不器用なお辞儀をする。
不器用すぎる………さすがに、これはどうにかせねばならないだろう。
お辞儀ですらまともに動けないのか、このお姫様は。
「相変わらず、可哀想なくらいの身体能力だ」
この兄王子様に同意するのはしゃくだが、フォローできない。
俺は心のメモに、実践作法のレッスン倍と書き留める。
「クラン、しっかり妹をフォローしてやるのだぞ」
あんたに言われるまでもない。
そう思いながらも、了承の礼を兄王子に向かってする。
伊達眼鏡がずれてフレームが視界にはいる。
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