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まぁ、その通りと言うべきか否か。
ひっそりと舌なめずりをしていると、兄王子が主の方を見た。
「さて、妹よ。さきほど叔母上が呼んでいたから行ってこい」
『行ってきたら』ではなく、『行ってこい』。
全く兄王子らしい。
主はため息をこっそりつくと、「では」とたどたどしくお辞儀をしてパーティーの中心へと足を進めた。
すでに躓きそうだが、ゆっくり歩いていれば問題ないだろう。
少なくとも俺が行くまでは。
さて、こちらは早く片付けてしまおう。
「サネル王子、何かご用でしたか?」
改めて向き直ると、兄王子は不機嫌そうに顔をしかめた。
「……お主はいつ、あいつを処分するのだ」
あぁ、やっぱりその話か。
「最近は他の者が差し向けてる刺客まで排除しておる………どういうつもりだ」
不穏な空気が兄王子から立ち込める。
俺は努めて顔に笑顔を張り付けた。
「どういう、と言われましても。王子はお気づきと思いますが、これは絶好のチャンスなのですよ」
「ま、まぁ、気づいてはいる。が、念のためお主の口から聞きたい」
こういう時だけは頭も口も回る。
「まず、こういう手段を取る方を排除できますね。この時点で刺客を使うものは、今後こういう手段を使う可能性が極めて高い」
この王子なら処分も楽であるだけじゃなく、傀儡にしやすい。
だから刺客は、万が一にも『王』なったら困る妹姫に向く。
そう心の中で付け加えながら、俺はほくそ笑む。
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