「俺は嘘は言わない」

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「それに、こうやって信頼を勝ち得てから裏切るというのも、オツでしょう?」  なんの信頼を勝ち得て、何を裏切るとは絶対に言わない。  ここは大事なポイントだ。  兄王子の様子を窺うと、明らかに上機嫌になった。  どうやら納得したらしい。 「お主は酷いやつだ」  嫌みったらしい歪んだ笑みが、よくお似合いで。  そんな言葉が出そうになるが、しっかりと飲み込む。  早く主のところに行かねば、そろそろ転びかねない。 「くれぐれも、妹にはバレぬようにな」  そう言って兄王子は立ち去る。  俺は肩をすくめて、笑いを隠す。  立ち去った兄王子が人混みに紛れて見えなくなる。  その上で『ペアではないが、似た柄の物』にした伊達眼鏡をはずして眺める。 「ばれるも何も、最初から主は気づいてましたよ」  引き合わされた、あの時から。  手入れを忘れた髪と肌のまま、姫は現われた。  側に付いていた者は軒並みいなくなったと、王子から聞いていた。  王子が俺を紹介すると、彼女は丸い眼鏡がずり落ちるほど驚いた。  そして、妹姫は「やっと、か」と小さく呟いたのだ。  悟りきった瞳をレンズで隠して、微笑を称えた妹姫は、あっけないほど暗殺者の俺を受け入れた。  いつかは兄に殺されると、知っていた。
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