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「聡明すぎるのも考えものですね」
伊達眼鏡をかけ直すと、姫唯一の側付きを演じる。
早足に歩を進めると、柱の影に主のドレスが見えた。
「遅い」
どうやら、躓く前に足を止めていたらしい。
俺はポケットから白いハンカチを出すと、そっと冷や汗をぬぐってやる。
あの時ボロボロだった姫は、俺に磨かれてそこそこ見違えた。
本当は元々素材がいいので、そこそこ以上にもなるが、それは他所様に見せるものじゃない。
本当の『リーニャ』は、俺さえ知っていればいい。
「お待たせしてすみません。さて、叔母様に挨拶に行くのでしょう?」
「当たり前でしょう、叔母様の誕生パーティーだからこんなところに来たのよ」
ただのパーティーなら絶対いかない。
そんな言葉が目に浮かぶ。
「さぁ、お側付き様。エスコートしてくださるのでしょう?」
少しむくれたお姫様は、俺に手を伸ばす。
「ついでに殺してくれてもいいのよ」
「物騒な姫ですね」
眼鏡と瞳の間に落ちた髪を直しつつ、俺は姫の手を取る。
お気に入りを殺す方法なんて、いくらでもご用意してますよ?
覚悟なさいませ、お姫様。
fin.
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