第1章

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秋の気配が日に日に濃くなってくる。 日中はともすれば半袖でもいいくらいの陽気になるのに、 朝晩は長袖一枚ではもう寒いくらいだ。 くしゅん、 と玄関先からくしゃみが聞こえた。 朝の仕入れから帰ってきて、 ようやく日が昇ったところ。 箒と塵取りを持った夏目が鼻を擦りながら入ってくる。 「風邪でも引いたか?」 厨房の中から秋月が心配そうな顔を向けた。 「ちゃんと布団かけて寝てるのか?腹を冷やしてるんじゃないだろうな」 「子供じゃないですよ」 夏目が唇をぷっと尖らせる。 「寒くなってきたら母屋に来るか?」 生きのいい秋刀魚をお造り用に選り分ける秋月に、 夏目が首を振る。
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