チカラを託す者

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チカラを託す者

受付で着替えをもらおうとすると、木村さんが部屋を指差しながらそのまま入るよう指示される。 ドアを開けると社長と蓮さんが既に来ていた。 「百合さんおはよう。普通ならつなぎに着替えてもらうんだが、今日は仕事で行く訳ではない。でも危険はいつも以上なので…ジャーン!照ちゃんに頼んで普段着だけど防護完璧服を特注しましたぁ」 ハッピーのディナーショーの時並みに、ドヤ顔をしているが蓮さんはノ―リアクションだし、こちらもどう反応していいのか分からない。 「もうちょっと喜んでくれてもええぞ?蓮にも仕方なく準備したのに無言だし、年寄りは拗ねるぞ?」 「あぁ、照ちゃんのトコだったらかなりボラれたんでしょうね、有難うございます」 「いやそこじゃなくてぇ、機転が利くよねとか、さすが社長とか……」 無言でお辞儀をして受け取ると、まだ話を続けてる社長を置いてロッカーで着替えを済ませた。 デニムとスウェット地のトレーナーに運動靴で、全くオシャレではないが、身を守る為なら文句も言えない。 受付に戻るといつもより大きめのリュックが用意されていたが、持ちあげてみると重量感はあまりなかった。 「必要な物は揃えてあるから安心してね」 「有難うございます、今回は妹に渡された非常食も持参していいですか?」 中身を確認されてからOKを出してもらったので、そのままリュックに詰め込んだ。 イナリのリードを外して社長達が居た部屋に戻ると、椅子に腰かけるように言われ席に着いた。 「さて、ワシは一日しかお供出来んが、ちょっと速報が入ったので説明しておく」 『ニュースじゃねーんだよ!』 心の中で思ったが、社長は私の呆れた表情は慣れているのか気にしていない。 「実は凱の世界で不穏な動きがある。トップ争いかと思っておったが、それに加えて厄介な訪問者が来るみたいだ」 「ーーえっ?」 急に背筋が伸び聞くモードに入ったのは、変な事に巻き込まれたくないし延期も視野に入れたからだ。 社長の話によると、キツネの世界の者がある能力を持っていて、その力を凱に譲るかどうか見際めに来るらしい。 それとは別に凱は療養という名目で別荘にいて、社長の予想では、トップを狙ってる誰かをおびき出そうとしてるという事だった。
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