72人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
チカラを託す者
受付で着替えをもらおうとすると、木村さんが部屋を指差しながらそのまま入るよう指示される。
ドアを開けると社長と蓮さんが既に来ていた。
「百合さんおはよう。普通ならつなぎに着替えてもらうんだが、今日は仕事で行く訳ではない。でも危険はいつも以上なので…ジャーン!照ちゃんに頼んで普段着だけど防護完璧服を特注しましたぁ」
ハッピーのディナーショーの時並みに、ドヤ顔をしているが蓮さんはノ―リアクションだし、こちらもどう反応していいのか分からない。
「もうちょっと喜んでくれてもええぞ?蓮にも仕方なく準備したのに無言だし、年寄りは拗ねるぞ?」
「あぁ、照ちゃんのトコだったらかなりボラれたんでしょうね、有難うございます」
「いやそこじゃなくてぇ、機転が利くよねとか、さすが社長とか……」
無言でお辞儀をして受け取ると、まだ話を続けてる社長を置いてロッカーで着替えを済ませた。
デニムとスウェット地のトレーナーに運動靴で、全くオシャレではないが、身を守る為なら文句も言えない。
受付に戻るといつもより大きめのリュックが用意されていたが、持ちあげてみると重量感はあまりなかった。
「必要な物は揃えてあるから安心してね」
「有難うございます、今回は妹に渡された非常食も持参していいですか?」
中身を確認されてからOKを出してもらったので、そのままリュックに詰め込んだ。
イナリのリードを外して社長達が居た部屋に戻ると、椅子に腰かけるように言われ席に着いた。
「さて、ワシは一日しかお供出来んが、ちょっと速報が入ったので説明しておく」
『ニュースじゃねーんだよ!』
心の中で思ったが、社長は私の呆れた表情は慣れているのか気にしていない。
「実は凱の世界で不穏な動きがある。トップ争いかと思っておったが、それに加えて厄介な訪問者が来るみたいだ」
「ーーえっ?」
急に背筋が伸び聞くモードに入ったのは、変な事に巻き込まれたくないし延期も視野に入れたからだ。
社長の話によると、キツネの世界の者がある能力を持っていて、その力を凱に譲るかどうか見際めに来るらしい。
それとは別に凱は療養という名目で別荘にいて、社長の予想では、トップを狙ってる誰かをおびき出そうとしてるという事だった。
最初のコメントを投稿しよう!