一人目 幼馴染み

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「また泣いてるし…」 「…うっさい」 夕日でオレンジに染まった教室。 そこには、2つの影が浮かんでいた。 「この泣き虫めっ!」 君の大きな手が、僕の頭をわしゃわしゃと撫でた。 慰めてくれてるんだけど、それがまた泣けてくる。 「止めろって…」 小さな手でそれを払ったけど、君は笑顔で言った。 「何か食って帰るぞっ」 やっぱり君は優しいね。 泣いてる理由を一度も聞かないし、いつも慰めてくれる。 そんな君に恩返しがしたかった。 「何か欲しいものある?」 「別にないけど…」 「じゃ、して欲しいことなら?」 「それもねぇーよっ笑 お前らしくねぇーぞ」 真っ赤に染まった空の下、今は一人で歩いている。 やっぱり一人は寂しいな… 君がいないと冷たいな… 退屈だな… 「帰るぞっ」 もう二度と聞けない君の声が、聞こえた気がした。 ねぇ、今どんな気分? 願いが叶った実感ある? 僕は寂しいよ。悲しいよ。 だって、君が… 夕日みたいに赤く染まって机に突っ伏している。 それを見つめる僕も赤く染まる。 これが幼馴染みの君への恩返し。 「さぁ、帰ろ…」 鉄臭い涙が頬に流れた。
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