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「なんだよ、テカリ力って、訳わかんねぇよ。」息を切らしながら家まで走った。
家の前の角を曲がった時だった。只ならぬ光景がすぐ目の前にあった。
自分の家を包囲するかのように多くの警察官が居た。
「なんだ、何があったんだ。」家の玄関前まで行くと母親が警察官と話していた。
母がこちらに気付いた。
「誠太郎!」母が大きな声で呼んだ。
「あんた、あんたなんで、そんな子に育てた覚えはないよ!」と泣きながら叫んできた。周りの警察官も一斉にこちらを向く。
「え。何。」誠太郎は立ち止まった。何が何だかわからない。
「あんた、そのテカリ力でどうする気なの!」
「またかよ、だから、このテカリ力ってなんなのさ!」と叫び返した。
その瞬間、急に辺りがぼやけて目が閉じていく。自分がゆっくりと倒れていくのがわかる。
半開きの目にぼやけた視界で母親が駆けつけようとしてくれているのを警察官、数人が止めに入っている。そこで映像は終わった。
気が付くとベッドに居た。
「…夢か。」右手には携帯を持っていた。携帯の画面を見て、テカリ力のパラメータがないか見た。パラメータのどこを探しても、テカリ力は見つからなかった。
「ふぅ。」誠太郎はため息を付きながら、勉強する気が起きなかった。
「あの夢は何だったんだろうか。」そんな事をぼんやり考えていたら
携帯の着信音が鳴った。下の階の母からメールが送信されてきた。
「パラメータも大事だけど、そんな数字で人間の大きさは決まらないのよ。
勉強や努力は大切だけど数値なんて気にしちゃだめよ。誠太郎の人生は数字では決まらない。誠太郎の魅力は、お母さんが一番、解ってるから。でもね、今日は筋力を高める為に
予定通りのプロテイン天ぷらにするわね。」
「この、筋肉マニアの母親め。」と少し笑顔で言った。
「さ~って、頑張るか」とベッドから立ち上がり、携帯電話の電源を切り
誠太郎は机に向かった。
同時刻、別の場所にて。
「今日はエステ行ったから、美力のパラメータがアップしてるはず。」
「うふふ、やっぱりね美力アップ~。」
「あれ、なにこの異様に高い数値のステータスは。」
「テカリ力(リョク)?」
終
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