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「止…めないか! 虎羽! 」
橋野は開いたドアの前で、正気を失った実父の姿を見た。ベットの上で手首を縛られ、口をビニールテープで塞がれた唐須に息を呑む。
唐須の苦痛に歪む顔は那智縄を見ていた。正気を失った安川を那智縄が宥めている。
実の父までも狂わせたのか? こんなことになるなら、強引に摘んでおけばよかった。
そして……時人が言う『甘い危険な香り』を漂わないように、毟り取っていればこんなことになってなかったのか?
(俺以外のやつがこの人をなぜ傷つけるんだ)
「亮平は俺のお気に入りだ。だが愛しているのは亮平の父親の方だ」
「亮平ではない……」
事実を告げられた唐須は、悲愴な顔をしている。辛そうに眉を寄せ、固く目を閉じた。
(俺以外で気づいた顔…しないで……)
橋野は険しい顔で奥歯を噛みしめ、両方の手を固く握った。
橋野が口を開こうとして、前にいる那智縄に止められた。那智縄に目線をやると、那智縄が目線を安川にむけた。
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