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『……嘘つき! 僕は許さないから! 』
少年の顔が橋野に替わり、こちらを睨みつける。
『違う! 俺は……』
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あ…れ……俺……確か……
安川……さんが……うまく……思いだせない……
橋…野……橋野は……?
寝室のベットで身体を起こした。唐須は後頭部に鈍い痛みを感じその部分に触れた。湿布薬が貼られていた。
昨夜の記憶が徐々に思いだしていく……
唐須は自分の身体に目をやり、安川に触れたことを思いだす。眉を寄せ両肩を強く抱きしめた。
サイドテーブルにマンションの鍵と、パスケースが置かれていた。
慌て立ちあがり、よろけながら手に取った。パスケースの下に白い小さな紙が添えられていた。
『必ず病院へいって下さい 橋野』
細いボールペンで柔らかい文字が書かれていた。紙を力が強く握りしめると、唐須はその手をサイドテーブルに打ちつけた。
「嫌いなら…優しくするな……おまえの痕を残すなよ! 大切な人はいつも……俺から去っていくのか……」
唐須は眉を寄せ、震える身体を抱きしめた。
「…こんな…身体の奥まで痕を残して!! そんなに…嫌いなら…なぜ…優しく抱いた!! 」
唐須は力なく崩れ蹲る。橋野の痕が深く残る身体を抱きしめ静かに泣いた。
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