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『CLUB 道化師屋」は舞台が設置可能なスペースがあり『劇団 道化師屋』はここで公演していた。芸術大学OBの団長は、その後輩達や他の劇団にもこの場所を貸している。
その為か予想していたよりチケットが売れ、満員御礼の日がでてきている。
団長 枡田亜輝(ますだ あき)に『ここで最後の公演がしたい』と持ちかけた。
『また急な話だな…あの父親をどうやって説得してきたんだ』
『条件つきで許してくれました。期間は三カ月……』
『三ヶ月?! おいおい! また無茶苦茶な』
『面白がってるんですよ…あのタヌキジジ』
ブッと吹きだした枡田は橋野の顔を見て笑った。
『なにがおかしいんですか? 』
ムスっとした橋野を枡田はまた笑った。
『あぁ~すまん、おまえら血が繋がってなくても親子だなってなぁ……』
『・・・ 』
『おまえも充分タヌキだけとな…どうせ烏から逃げてきたんだろ? どうだ? 心の底から欲しいと思った気持ちは? 』
『怖いですよ…こんなコントロールの利かない自分が……』
その橋野の顔を見て一瞬、驚いた顔をした枡田は目を細め微笑んだ。
『勿体無いな~~今いい顔してる。本当に最後でいいのか? 』
『はい』
『そうか…あっ! そうだ! おまえにプレゼントをやろう! 一番いい席を一週間。『黒薔薇の君へ』チケット送っといてやるよ』
『え……? 』
『観て欲しいんだろ? あの人に…』
眉を寄せた橋野は俯き上唇を噛んだ。
『後はマサ…おまえ次第だ』
枡田には橋野の肩に手を置くと軽く叩き、カウンターのへ歩いていく。
『団長!……ありがとうございます! 』
橋野は深く頭を下げ礼を言うと、枡田が片手をあげ広い板張りのスペースを歩いていった。
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