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『薔薇』はお父様とお爺様が好きな花。
お父様は『赤い薔薇』がぴったり。
お父様以外に似合う男はいないと僕は思っていた。
『……綺麗に咲いたよ…本当に濃い赤だね…』
暖かい風が色素の薄い髪を乱す。白い頬に細い指先。その指先には赤黒い花弁を広げ、水気を含んで潤んでいた。
朝日が潤んだ若葉に反射し花や木々が喜んでいるように見えた。
(あ……)
『……き…れい……』
『…誰? あ……もうお熱下がったの? 』
僕に微笑む僕よりずっと年上の人。初めて『薔薇』が似合うと思った人……
…………
(あたまが…ボーっとする…)
障子を開け中に入った。
(僕の部屋じゃない……)
『どうした?…一人じゃ寝れない? 』
そうじゃないけど頷いていた。
(また、嘘つきだって言われるかな)
『そうか….おいで』
側にいき布団に入った。
『僕…死ぬかと…思った』
『熱でかい?』
コクっと頷いた。優しく頭を撫で僕を抱きしめた。
『死ななくてよかった』
(熱なんかで死なないよ? )
『……う…ん……』
鼻先で心臓の音が聞こえる。ゆっくり同じテンポで繰り返す音。僕はバレないように顔を寄せ擦りつけた。 心地よい音とあの庭に咲く薔薇の匂いがする……僕の心臓がギュってなった。
(なんでだろ…心臓の音が早いのは熱のせいかな……)
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