番外編1 薔薇の香りに魅せられ

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公演二週間前、プリザーブドフラワーの薔薇がやっと届いた。受付入り口辺りから、洋館の壁下段辺りまで、色んな色の薔薇をアレンジメントしていた。 橋野のは吸水スポンジにグールガンで薔薇を接着しながら、手伝いをしてくれる救世主達(蜜や他のスタッフ)に説明をしていた。 「さすが~薔薇王子だな」と蜜が言う。 「素敵! フラワーアレンジメントもできるんですね」と一人の女性スタッフが言った。 「こんな感じでお願いします。後…三十個ぐらい必要なので」 橋野が頷くと蜜やスタッフが頷き作業に取りかかる。 (後……少しで完成する) ………… 公演二日前、腐れ縁の…団長のお知り合いでもある。いけ好かない花屋 『perfect fifth』(パーフェクトフィフス)に注文していた薔薇が届いた。 届けにきた高安晴真(たかやすはるま)の顔を見ると不機嫌になった。その橋野を見て高安は苦笑する。 「お~い~せっかくさ~素敵な薔薇届けにきてやったのに…その顔はないだろう……それも激安だそ! 実家にいって摘んできてやったんぞ! 運ぶの手伝だえって! 」 橋野は薔薇の束を置いてある台車にむかった。無言で薔薇の束を降ろし、台車を空けて次の分を持ってくるように高安に言った。
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