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あの人はまた…困った顔をしていた。身勝手な独占欲をなぜ怒らないのだろう。調子乗って身体まで触ったのに……
『好きか? 』と聞いても頑なに言おうとしない。嘘を言えばいいのに…あの時のように。身体の隅まで触れて…追いつめて……なのに俺を拒み続ける。
自分をうまくコントロールできてた。ずっと長い間やってきた『演じる』ことには慣れていた。
好きだと思う人と付き合いはしてきた。相手が望む『人物』になりきり、必要だと言われるまでなっていた。
だか、どれも……自分の本心を見せたことは一度もない。そして偽の自分に疲れ終わる。
相手が傷つこうが、最低だと罵られようが容赦なく切り捨てた。
その『演じる』というコントロールが、効かなくなっている。あの人の前では……
演じていたはずが、勝手に感情だけが暴走する。触れたい! 感じたい! 身体の欲求が増すばかりだった。
(これじゃ……俺が溺れてるみたいじゃないか……)
喉の渇きを潤すため、ソファから立ち上がった時だった。携帯の振動音に気づき、画面を見て眉を寄せた。
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