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考えるより先に体が動いていた。車のキーを掴んで家を飛び出した。
メタリックブルーの車が反応し、橋野が運転席に乗り込んだ。地下駐車場からゆっくりと車がでていく。
途中、あの人に電話をしたが応答がなかった。
(くそ!! 間に合ってくれ!! )
携帯が振動する。着信の相手は那智縄だった。シガーソケット式充電台に挿さるヘッドセットを押した。
「……はい」
"「……雅範すまん寝ていたか?」"
ワイヤレススピーカーフォンから聞こえる那智縄の声が、いつになく早口だった。
橋野は眉を寄せながらハンドルを右に動かした。
「…いえどうしたんですか? 慌てて……親父らしくない」
"「……さっき虎羽(こう)から電話があってそれが妙だったんだ。『今からあなたの大切な唐須の息子に会いにいく』って気になって亮平のマンションにきてみたんだか…応答がない」"
「俺も時人から連絡もらってそっちにむかってます。中に入れないんですか? 」
"「ああ……管理会社に連絡したが、ここにくるのに時間がかかるらしい。どうしたらいい…… 」"
(クソ!! )
こんなに焦る那智縄の声を聞いたことがない。那智縄もなにか嫌な予感がしているのだろう。
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