Ep.1新学期

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「………さ…」 遠くから声が聞こえる。 絹のベールのようなものを被せたかのように、まるで水の中にいるかのように。 「…い……ま…」 とても心地が良い。 と、その瞬間、けたたましい音とともに声の主が分かった。 「お嬢様!おはようございます!起きてくださいませ!今日から新学期ですよ!!」 サイドテーブルに置かれている小さな時計から、これでもか、というほどの大きさで目覚ましが鳴っている。 「遅れますよ!早くお支度なさってくださいませ!」 声の主は侍女だった。 カレンダーを確かめようと思ったが自分の部屋にはないことを思い出す。 「今日から高校生ですよ。楽しみですねぇ」 実はそんなに楽しみではないが、コクリと頷いておいた。 なにせ幼稚園から大学までエスカレーターなのだ。 多少は新しく人を採るのだが、微々たるものなので、ガラッと何かが変わることなんてない。 そう思っていた。
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