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「………さ…」
遠くから声が聞こえる。
絹のベールのようなものを被せたかのように、まるで水の中にいるかのように。
「…い……ま…」
とても心地が良い。
と、その瞬間、けたたましい音とともに声の主が分かった。
「お嬢様!おはようございます!起きてくださいませ!今日から新学期ですよ!!」
サイドテーブルに置かれている小さな時計から、これでもか、というほどの大きさで目覚ましが鳴っている。
「遅れますよ!早くお支度なさってくださいませ!」
声の主は侍女だった。
カレンダーを確かめようと思ったが自分の部屋にはないことを思い出す。
「今日から高校生ですよ。楽しみですねぇ」
実はそんなに楽しみではないが、コクリと頷いておいた。
なにせ幼稚園から大学までエスカレーターなのだ。
多少は新しく人を採るのだが、微々たるものなので、ガラッと何かが変わることなんてない。
そう思っていた。
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