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ゆっくりと階段を降りながらダイニングから香ばしい香りが漂ってくるのを感じる。
「今朝はなんだろう…」
ご飯を想像する時が一番楽しい。
この香りは焼きたてのパン。
シェフが作るパンは最高に美味しい。
「姉様!おはようございます。今日から新学期ですね、ドキドキします…」
ダイニングには妹がいた。
家のルールで、妹、私、母、父の順で食卓につくことが決まっている。
「おはよう、お二人とも」
フワッとしたシフォン生地を揺らせながら母が降りてきた、珍しく父と一緒に。
「おはようございます、父様、母様」
こうして食事が始まった。
予想していた通り、焼きたてのパン。
ついつい笑顔になってしまう。
「ふふっ…」
「あら、どうしたの?新学期がそんなに楽しみなのかしら」
つい声にも出ていたらしい。
「いえ、母様、パンが美味しくて…」
「本当に焼きたてのパンが好きね。沢山あるのだから、いくらでも召し上がって、ね」
母は優しい。
父も口数は少ないが優しい。
「そろそろ時間だわ、姉様。」
妹に声をかけられ、慌てて残りのパンを頬張り、鞄を取りに部屋へ戻る。
「それでは、行って参ります、父様、母様。」
妹と2人仲良く玄関で父と母に挨拶し、ドアを開けた。
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