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細やかな細工が施されたシルク製のレースカーテンが揺れている。
閑は窓辺の席に座って外を眺めることが好きだった。
ふと、門の方を見ると見知らぬ生徒が車から降りるところだった。
「新しい方かしら…」
タイの色は同じ。
しかし中等部で見かけたことはなかった。
格別その子がどうということはなかったがとても気になって仕方がなかった。
「閑さん、御機嫌よう」
急に呼ばれて振り返ると樹里がいた。
「どうしたの、ぼーっとしてらして。窓の外に何かありました?」
樹里はそう言うと、ふわっと微笑んだ。
そう聞かれて思い出すかのようにもう一度外を見たが、あの生徒は消えていた。
「いえ、なんでもないのよ…そろそろ講堂へ行く時間かしら」
今日は初等部、中等部、高等部の入学式及び始業式が行われる。
初等部から持ち上がってきた閑や樹里にとっては単なる行事の1つであるが、新しく入った生徒にとっては入学式という大切な節目だ。
「そろそろ講堂へ参りましょう」
そう言うと閑は樹里の手を取り、教室の扉を開けた。
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