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「そういえば樹里、どうして私の名前に"さん"なんて付けたの?」
幼い頃から閑と樹里は親しい。
普段は"閑ちゃん"と呼ばれ、"樹里"と呼ぶ。
「ん~、なんとなくよ、閑ちゃん♪」
樹里は良く言えば天然。
悪く言えば世間知らず。
腰まで伸びたふわふわの茶色がかった髪が自慢だ。
「閑ちゃん、閑ちゃん」
「なに?」
「樹里ね、シャンプー変えたの、分かる?」
確かにいつもと香りが違う。
樹里は髪の毛のこととなると誰にも負けないような力を発揮する。
いつもそうであれば良いのに…
「香りがいつもと違うわ、いい香りね」
「本当に?閑ちゃんに褒められたから暫くはこのシャンプーにしよう♪ふふふ♪」
「樹里は相変わらずね」
「ふふふふふふ~♪だって樹里、閑ちゃん大好きだもの!」
こうしている間に講堂へ着いた。
高校は2クラス編成。
松組と竹組である。
「閑ちゃん、今年も一緒、松組よ!よろしくね!」
クラスの分け方は単純明快。
生徒は親の職業・年収・学校への寄付金額で「銀・銅」の2つにランク付けされる。
松組は銀の生徒のクラスだ。
入学式で座る席や制服、使用できる施設が違う。
そして、銀の中で最も点数の高い者が生徒会長「金」のランク付けをされる。
本人は知らないが今年は閑である。
よって、どんなに近しい人間であっても彼女のことを呼び捨てにするのは以ての外、様付けが義務付けられる。
樹里にとって閑は幼馴染のようなものだが、この学校の制度を一番理解している彼女にとって、閑のことをちゃん付けで呼んでも良いものなのか、考えたのである。
そして、金の生徒は毎年入学式で発表される。
講堂の緞帳が上がった、入学式の始まりである。
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