alone 一人で

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 零が部屋から完全に出て行った事を確認した遼は、インカムで自分の相棒に話しかける。 『伊吹!』 『遼。まだ、見つからないのか? やっぱり、俺も……』  インカムから、相棒である月見坂伊吹の声が聞こえて来る。  彼に、捜しに行くとつげてもう二十分経過していた。 『いや、彼ならもう見つかった』 『だったら、早く戻ってこいよ。早く事務所に連れて行かないと……』  伊吹の怯える声がインカムから耳に伝わってくる。  伊吹が恐れているのは、「Black Bird」の社長黒鳥恭輔の事。彼が怒ると必ず無事ではいられない。  そして、事務所に、社長を止められる人間は誰も居ない。 『なぁ? 伊吹、俺、いまどこにいると思う?』  社長に怯えている伊吹に質問を投げかける。  遼からの質問に伊吹は、普通にこっちに向かっていると思い、 『もちろんこっちに向かってるんだろ?』  と答えを返す。  けれど、遼からは、予想だにしない回答が返ってきた。 『いや、彼の家。正確には、彼が通ってる中学校の寮だけど』 『……遼。どうやって、入り込んだんだよ。お前まさか……』  遼たちが所属する捜し物専門の探偵事務所「Black Bird」には、ある決まりが存在する。  彼らは、依頼でどんな場所にでも、潜入しなければならない。その為に、どんな場所に行っても一瞬で監視カメラを探し出し、データを一時的に書き換えたり、セキュリティーなどから自分達の存在を隠さなければならない。  その為に、たくさんの勉強と訓練を受けた。  そんな彼らにも、潜入できない場所、立ち入りを禁止している場所がある。  その場所とは、個人の私有地、立ち入りが禁止されている場所。  但し、本人がどんな理由であれ招き入れてくれた場合は、例外。 『……違うよ。零くんが、招き入れてくれたんだよ』 「一之瀬さんお待たせしました!」 『零くんが戻ってきたみたい。社長に、伊吹から遅くなるって伝えといて。訳を話せば大丈夫だから』 『わかった。けど、なるべく早く連れて来いよ』 『ありがとう』 ★
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