alone 一人で

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「これは、亡くなった祖母が使ってた携帯で、本当ならもう使用できないはずなんですけど、契約があと2カ月残っていて、いま解約すると解約金が発生してしまうので、契約が切れる12月まで使うことにしたんです。それに、祖母は、プリペイド式携帯電話を使用していたので使える額が決まってるんです。もしかして、インターカムって、携帯みたいに通話ができるんですか?」  上限が残り少なってきていたので、自分の目の前に突然現れたインターカムが携帯と同じ機能があるなら、零にとっては夢の道具。 「できるよ。それも、携帯電話みたいに、一対一じゃあなくて、複数の人と一度に会話ができるよ。あと、誰にも聞かれたく話ををする時にも使えるよ」  ニコッと笑いながら、零の質問に答える遼。 「すごい!」  「零くん。確認したいからつけてみてくれる?」 「はい!」  俺は、外にいる警備員に聞こえないギリギリの大きさの声で返事を返すと、渡された袋から、インカムを取り出し耳につけた。  すると、耳の奥から突然声が聞こえてきた。 『零くん? 聞こえる?』  耳につけたインカムから聞こえたきたのは、自分の目の前にいる一ノ瀬遼。  確かにインカムと呼ばれる物体から声が聞こえてくる。  俺は、携帯で通話をするようにインカムに話しかける。 『一之瀬さん。聞こえます。これ、すごいですねぇ。本当に携帯みたいに会話ができるんですね』 『零くん。本当に嬉しそうだね?』 『はい。でも、このインカム、少し変わってますよね? 耳につけた瞬間、消えたんですけど? 確かにつけたはずなのに』  インカムを耳につけた瞬間、その存在が消えてしまった。 けれど、確かに、自分は、耳に白色のインカムをつけたはず。 だって、その証拠に耳の奥から一ノ瀬さんの声が聞えてきた。 『このインカムは、特殊なインカムで。つけた瞬間、透明になるんだよ』 『透明!』  インカム越しに聞こえてきた遼の説明に叫ぶ。 『うん。僕たちの仕事は、情報収集が大事だから、目立つものを身に着けているとうまく話しを聞くことができないんだ。それに、こんな見た目だしね』  いま遼が、零に語った説明には嘘と真実が半分ずつ混ぜている。  けれど、13歳の彼は、その説明をすべて信じた。 『そこまで、考えているんですね。確かに、探偵ってあまり目立つものつけてませんもんねぇ』 『そうなんだ。だから、君の耳にもちゃんとインカムはあるよ。ただ、透明化しただけ。零くん。君が大丈夫ならそろそろ事務所に行こうと思うんだけど……」  事務所にそろそろ行きたいとインカム越しに訪ねてくる遼。  そんな彼に対して俺は、あえて彼の名前を叫んだ。 『一之瀬さん』 ★
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