alone 一人で

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『零くん? 顔色悪いけど大丈夫?』  名前を呼んだのに全然次の言葉を言わない零に、遼がインカム越しに心配そうな声で尋ねてくる。 『……』  けれど、零が何も返事を返さないので、遼は続けて言葉を発する。 『……もしかして、まだ僕達の事、信用できない? あぁ! もしかして、悩んでる? このままこの人たちに関わっていいのか?』 『!?』 (考え読まれてる?) 『その顔は、当たりかな? でも、そうだよね。君はまだ、13歳。それなのに家族亡くして、自分一人で生きていこうとしている。そんな君が、いきなり目の前に現れた、訳も分からない大人を信用しようなんて無理だよね? でも、信じて欲しい』 (えっ!)  突然、零に向かって頭を下げる遼。それも、土下座。 _五秒後_ 「……一ノ瀬さん。顔あげて下さい」  土下座をしていた遼がゆっくり顔をあげる。 「零くん!」 (ここまで相手がしたんだから、自分も本当の気持ちを彼に伝えた方がいいよね? でも、直接彼の目を見て言うと、後が怖そうだからインカム越しで)  大きく息を吸って、ゆっくり吐き、呼吸を整えるとインカムに向かって話し始めた。 本当の気持ちを。 『一ノ瀬さん。自分もあなた方を信用したいです。自分には、いまお金が必要なんです。その為に自分はバイトを捜しています。そして、偶然見つけたのが、このBlack Bird の捜し物専門の探偵募集のチラシでした。社長の黒鳥さんには、自分の過去を話しました。彼の熱意を訊いて信頼できると思ったからです。けど、いまは、自分の過去を話した事を後悔しています。それは、あなた方が嘘をついているからです。一ノ瀬さん。Black Bird は、普通の捜し物専門の探偵事務所ではありませんね? あと、一之瀬さん達もやっぱり、普通の捜し物専門の探偵ではありませんね? だって、そうじゃないなら自分が、その質問をした時にだけ、顔色が変わる訳ないですもんね? それ以外は、笑顔だったのに、この時だけ舌唇噛んでましたよね?』 『______________________やっぱり、君ってすごいね。社長が会いたがる訳だよ。そうだよ。僕は、君に嘘をついている。けど、その答えは、僕より、本人に訊きな』  零の本音と言う推理に関心した遼は、ニコッと零に一瞬、笑顔を見せると、スッと立ち上がり、自分の左手を零に差し出す。 「一夜零。Black Bird 社長、黒鳥恭輔があなたを待っています」  ☆
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