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「追加情報の方が多くないか」
野口から提供された一夜零、そして、零の中にあるもう一つの人格ゼロについての追加情報。
そこに書かれていたのは、二人の過去。
それと……大好きな両親を亡くし、一人になった自分を育ててくれた祖母まで亡くし、13歳で一人で生きると決めた彼を守ろうとする心優しいゼロ本来の人柄。
本来のゼロは、凶暴な性格でも、猟奇的な性格でもない。
そして、この追加情報の解除方法が、まさかのあぶり出しだった。
そして、その方法も至って複雑で、太陽の光を資料全体に当てたあと、マッチ(黒鳥は、煙草もお酒を一切やらない)の火を用意していたロウソクにつけ、その火を資料の下に持って行き、資料が燃えないギリギリなラインであぶる。
で、野口があぶり出しに使用したインク、いやぁ、果汁は、まさかのレモン汁。
普通、あぶり出しに使用するのはミカンの汁。
けれど、野口がレモン汁を使用した理由は、ただ一つ。
「……あいつまたか」
ため息をつきながら、机の端っこに置いていたカップを手に取る。
そこには、スライスされたレモンが一つ添えられていた。
よく見ると、カップの中には、レモンティーが注がれていた。
黒鳥は、レモンティーを好んで飲むので事務所の冷蔵庫には、大量のレモンと紅茶が保管されている。
野口は、そこからレモン拝借し、絞りレモン汁を作りあぶり出しに使用した。
だか、このレモンは、黒鳥が生産者と直接会い、現地で購入したとても貴重なレモン。
なので、誰も食べれらないよう鍵付きの箱に入れ、頑丈に冷蔵庫に保管し、全員に「食べたら殺す」と脅し文句まで言っていたのに野口は、黒鳥の目を盗んで、毎回変わる鍵を見つけ出し、レモンを勝手に持ち出していた。
黒鳥は、野口が犯人だとすぐに勘づき、お説教(死なない程度に半殺し)しようと思ったが、あいつはどうせお説教しても、懲りずにやり続けると思ったので、相棒の村瀬斗真まで巻き込むのは、あいつの性格上あまりしたくはないがしょうがない。
こいつを痛みつけるには、この方法が一番効果的で、無駄な血も流れない。
そんな事を考えているとインカムの向こうから、一ノ瀬の怯えた声と……
『……猶予やろうと思ったけど、なんか俺の名前知られてるし。バイバイおっさん』
「……」
声の主は、ゼロ。一夜零、本人すらその存在を知らないもう一人の自分。
黒鳥は、資料を机に置き、一ノ瀬に向かって低い声で話し掛ける。
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