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「社長!」
黒鳥からの通信に遼は、少し動揺してしまう。
『……一ノ瀬。お前のインカムを彼に渡せ』
「社長! 何言ってるんですか?」
本来、Black Bird に所属する探偵は、自分のインカムを他人に絶対渡したりしない。
インカムに登録している個人情報を盗まれない為。
『いいから早く渡せ』
けれど、遼も黒鳥には逆らう事ができず、
「なにか考えがあるんですよねぇ?」
と若干諦めモードの返事を返す。ここで、もし反抗でもしたら自分が社長に殺される。
『あぁ。それと一ノ瀬、お前? 怯えすぎ。相手は子供だぞ!』
「……」
黒鳥が事務所に連れてくるまで絶対手を出すなと言うから、彼の様子が突然おかしくなっても我慢して手を出さなかったのに、張本人からそう言われ、返す言葉が出ない。
『お~い。一ノ瀬? お~い』
何も返事が聴こえなくなったので、黒鳥が遼の名前をインカム越しに呼びかけ始めた。
インカムから聴こえる黒鳥の声を無視して、自分に再びサバイバルナイフを向け、近づいたきた零の手からサバイバルナイフを奪い取り、代わりに自分の拳銃(安全装置付き)を彼の心臓に押し付けた。
拳銃を零の心臓に押し付けたまま、社長に返事を返す。
「……社長。このまま、彼のこと、痛めつけてもいいですか?」
『一ノ瀬! やめろ』
インカムから黒鳥の焦った声が聞えてくる。
「ねぇ? お兄さん、さっきから一体誰と話してたんの? あんたさ、今の自分の状況分かってる?」
_カチ_(拳銃の安全装置に指が少し当たる)
黒鳥との会話に突然割り込んできたゼロ(但し、遼から見れば零)。
けれど、ゼロは額に拳銃が向けられているのに怯える事もなく、むしろ笑みを浮かべていた。
そんなゼロを見て、遼は拳銃の安全装置にゆっくり指を掛ける。
_カチ_
「拳銃!?」
叫び声が部屋中に響き渡る。
声の主は、もちろん……
「一ノ瀬さん!?」
いつの間にかゼロから一夜零に戻っていた。
その様子を遼のインカム越しで聞き耳を立てていた黒鳥は、インカムに向かって衝撃な内容を語り始める。
『……一ノ瀬。一夜零は、二重人格だ』
「二重人格!?」
黒鳥から伝えられた内容に、拳銃が手から床に落ちる。
「……unreliable 信用できない」
悲しい声で一言英語単語を呟くと、耳につけたインカムを取り外し、テーブルの上に置くとそのまま部屋から出て行ってしまった。
そして、そのまま寮から外に飛び出した。
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