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「えっ!」
俺が、13歳って言った時の反応が無音だったから、今回もダメだと勝手に決めつけていたから、思わず相手が社長なのを忘れて、大きな声で驚いてしまった。
『大丈夫?』
「あぁ……すみません。はい、大丈夫で~す」
(折角、面接まで行けそうだったのに……)
社長に謝る。けど、言葉が少しおかしい。
『一夜君、そんなに緊張しなくていいよ』
自分が、落ち着くように優しく話しかけてくれる黒鳥の声に俺は、なんとか落ち着きを取り戻す。
「すみません。初めて面接まで行ったので」
『初めて?』
自分の言葉が不思議だったのか、黒鳥が聞き直してきた。
「はい。今まで電話した所は、自分が中学生ってだけで相手にもして貰えませんでした。けれど、それはしょうがないと思います」
正直に理由を語ると再び、30秒間電話口が無音になった。
そして、30秒後……
『……そういえば一夜君は、どうして仕事を捜しているの?』
無音から復活した黒鳥がさっきとは、明らかに違う冷たい声で自分にどうして仕事を探しているのか訊いてきた。
「……」
その声に今度は、俺の方が無音になる。
(さっきと全然声が違う…なんか怖い。俺、もしかしてやばい所に電話した?)
俺は、携帯を耳元に当てながら、目の前の募集チラシを見た。
けれど、何度確認してもおかしな点はまるでない。
けど、電話口の黒鳥の口調がまるっきり変わった。
(もしかして俺のせい? 俺が社長さんの質問に無言になったから)
『一夜君?」
無言になった自分を責めていると電話口から自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「あぁ! はい」
俺は、大きく深呼吸して返事を返した。
『質問、答えたくないなら無理して答えなくていいから。でも、会うからには、知っときたいんだ。どうして、十三歳の君が仕事を捜しているのかを』
(話して大丈夫だろうか? 十三歳の自分が一人で生きていくために仕事を探しているなんて。本当に信じて貰えるだろうか? 普通だったら絶対ありえない。けれど、この人は、知りたいって言ってくれた)
「いえ、話します。社長さんは、知りたいって言ってくれました」
零からのお願いを黒鳥は、驚きながらも受け入れてくれた。
お願いを終えた零は、黒鳥に、向かって理由を話し始めた。
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