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「自分は、9歳の時に交通事故で両親を亡くしました。
それからは、父方の祖母と一緒に暮らしていました。
でも、その祖母も今年の10月病気で亡くなりました。
祖母の葬式の後、自分を児童養護施設に入れると一度も会った事も無い親戚が一方的に言いにきました。
だから、自分一人で生きていくとその親戚に啖呵を切り、両親と祖母が残してくれた預金通帳と印鑑、祖母が自分に託した手紙、それと、必要最低限の荷物を持って家を飛び出しました。
飛び出して、祖母の手紙に書かれた住所にたどり着くまでは、野宿でした。
でも、全然辛くはありませんでした。大好きな両親を亡くした方が辛かったので。
その後手紙の相手にも無事に会うことができて、今は身元保証人になって貰っています。
あとから知ったんですけど、祖母が生前に自分が亡くなった後、孫の身元保証人になって欲しいと何度も頼み込んでいたらしいんです。
けど、そのおかけでいま自分は生きていく事ができるんです。
そして、御社に電話を掛けた理由は、これなら自分にもできると思ったからです」
すべてをさらけ出した。これでもし不採用になっても後悔はない。
そう、心に決めた零の耳元に優しい声聞こえてきた。
『辛い記憶を話してくれてありがとう。一夜君、君は強い子なんだんねぇ』
「強くありません。そうしないと自分一人じゃあ、生きていけないんです。あの? ところでどこに行けばよろしいでしょうか?」
Black Birdの場所を知らない。会うって言ってもどこに行けばいいのか分からない。
『それなら心配いりません。いま、迎えを向かわせましたから』
「迎え!? 自分がどこに居るか分かるんですか?」
『はい。探し物専門の探偵事務所ですから』
「あぁ!」
黒鳥の的確な回答に自分が電話していたのが探し物専門の探偵事務所だったと思い出す。
『なので、一夜君。迎えがくるまでそこで待っていて下さい』
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